
「おまかせ」というと、お寿司のイメージが強いと思います。
どんなネタが出てくるか分からない。もしかしたら価格も分からない。そんな印象があるからか、Gem Omakase(ジェム オマカセ)というブランド名を伝えると、「何が届くか分からないのですか?」と、聞かれることがあります。
もちろん、そうした事はありませんが、せっかくなので、ブランド名に込めた想いや意味について、お話ししたいと思います。
宝石の買い付けには「何に出会えるか分からないドキドキ」が待っている。
ABOUTのページでは、「Omakase = 巡り合う喜び」と表現していますが、かみ砕いて表現すると、「予想もしなかったものに出会えた時の、あのワクワク感を届けたい」ということです。

バンコクから車で4時間。
カンボジア国境近くの町 チャンタブリへ
私たち宝石バイヤーは、宝石の買い付けるために、世界中のさまざまな国、土地を訪れます。時には、何十時間も飛行機を乗り継ぎ、悪路を車に揺られて、ようやく宝石商のオフィスに辿り着くこともあります。
「今日は、どんな宝石に出会えるのか?」
買い付けの移動時間が経つほど身体の疲労はたまってくる一方で、目的に近づくほど「今日はどんな宝石に出会えるのだろう?」と、頭は覚醒して、期待で胸がドキドキしてきます。
前日に別のバイヤーが来ていて、良い石がすでに買われてしまっていることもあります。逆に、たまたま訪問した日に、入荷したばかりの美しい石に出会えることもあります。

カット(研磨)の質が高く、
彩度の高い、良質なブルーサファイアに出会えた日。
すべては、縁とタイミング。文字通り、一期一会の出会いの中で、宝石を買い付けています。そして、私が宝石の世界に魅せられているのは、この「予想外の」出会いにこそあります。
だから、厳選した宝石を使ってジュエリーブランドを立ち上げようと思った時、真っ先に浮かんだのは、このドキドキする気持ちを味わってもらえるブランドを作りたい、という思いでした。
物が溢れて、ワクワクが薄まってしまった
今の時代は、物が溢れています。オンラインショップを開けば、無限に商品が出てきます。AIやアルゴリズムが進化して、便利になったことは間違いありません。でもそれは、自分で選んでいるようで、いつのまにか選ばされているような感覚もあります。
インフルエンサーが紹介していたもの。ランキング上位のもの。たくさん「いいね!」がついているもの。そういうものに、気づけば気持ちが流されていたりします。そんな中で、私はいつのまにか、「ちょっと、お買い物がつまらないなぁ」と感じるようになっていました。自分が歳を重ねて、人混みに出かけるのが億劫になってきたことも、あるとは思います。
商業施設に行けば、馴染みのあるカフェや、よく知っているブランドが並んでいる。安心して出かけられる一方で、行く前から「こんな感じかな」と、ある程度想像できることも増えました。
もちろん、知っているお店がある安心感も、今の商業施設にとって大切なものだと思います。それでも私は、何があるのか分からない場所へ向かう時の、「今日は何に出会えるんだろう」と、少し浮き立つような気持ちが好きでした。気づけば、そんな偶然の出会いを期待する感覚が、以前より薄れている感覚がありました。
子ども時代の、近所の文房具屋さん
私は昭和生まれです。小学生の頃、近所に小さな商店街がありました。商店街といっても、豆腐屋さんと駄菓子屋さん以外は半分休業状態のような、少し寂れた、でも味のある場所です。
その中に、おじいさんが一人でやっている小さな文房具屋さんがありました。私は、そのお店に行くのが好きでした。天井まである棚。通路を塞ぐように置かれた什器。古い引き出し。色鉛筆、ノート、シール、画用紙、よく分からない道具・・

実際に買うのは、ノートやペンくらいです。それでも私は、そのお店に入るだけで、宝探しをしているような気持ちになりました。「この引き出しを開けたら何が出てくるのか」「棚の一番上にあるあれは、一体何なんだろう」「画用紙って、こんなに色があるんだ」
今思えば、私が好きだったのは、文房具そのものだけではなかったのだと思います。まだ知らないものが、どこかに隠れているかもしれない。自分だけの「見つけた」に出会えるかもしれない。その感覚が好きだったのだと思います。
あの文房具屋さんを訪れた時のドキドキを、もう一度味わえるような体験を届けたい。そんな気持ちが、ブランド名には込められています。
つい、覗きたくなる。
そんなジュエリー屋さんを目指して

1点物の宝石を使ったシグネチャーコレクション「PIECES」
ワクワクが薄まってしまった、と偉そうなことを書きましたが、Gem Omakaseはまだ生まれたばかりのブランド。紹介できている宝石の数も、まだ多くはありません。
ふらっと覗いた時に、「こんな色があるんだ」「この組み合わせ、ちょっと意外」「今日は買わないけれど、なんだか見ていて楽しい」、そう思ってもらえるような場所を目指して、日々運営しています。

